2025.04.27

第49回北海道建築賞表彰式に参加しました

irodoriが建築設計を手がけた住宅「ひゃくとわ」(北海道上川郡東川町)が、第49回北海道建築奨励賞を受賞し、北海道大学遠友学舎にて行われた表彰式・講演会に代表・一色ヒロタカが出席しました。当日は受賞者講演・記念パネルディスカッションにて、お話しする機会をいただき、その様子をお届けします。 

表彰式・審査経緯の解説|なぜ「ひゃくとわ」が選ばれたのか 
北海道建築賞委員会の主査・小澤丈夫さんからひゃくとわ受賞の経緯のお話がありました。 

小澤さん: 
「ひゃくとわ」は東川町において、昭和30年代から周囲の農地とともに建つ農家住宅を譲り受ける協議から始まったといいます。設計者は単に「建築設計」を行うのではなく、施主とともにの土地を引き継ぐこと」の意味を問い直し、「100年先まで続く家」をビジョンに据え、東川町の美しい風景と共にある住宅の実現を目指しました。 

一般的な「住宅」ではなく、施主と全国さまざまな属性の人が東川町で住むための住宅です。 
周囲の田園風景を景としながら、時間をかけて作り込んでいく外部空間、建物内部の空間ボリュームとその配分・構成、開口部・造作家具・仕上げ材と色彩など、配慮の行き届いた設計がなされていました。 

家族の形や住まい方が大きく変化している今日、地方への移住促進は社会の主要課題です。「ひゃくとわ」は移住を支える新しい住宅のかたち、住まい方であり、この具体的な提案は、地域と幸福な関係を結びつつ、どのように生きるかという問いを提示しています。 

この住宅の持つ規範性と、意義の大きさが全委員から高く評価され、北海道建築奨励賞の受賞へとつながりました。 

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前オーナーや施主である遠又家、地域の方々との度重なる対話を通して、地域の未来を紡ぐ新しい住宅・住まい方を提案しつつ、さまざまな人が日々を居心地良く過ごすことができるようにきめ細やかに設計した空間を高く評価いただきました。 

受賞講演にて、一色が手がけてきたプロジェクトについて、ひゃくとわについてお話をさせていただき、その後は他の受賞者の方との記念パネルディスカッションへ。 

パネルディスカッション|時間軸と建築について

パネルディスカッションでは、司会・松島潤平さん、山田深さん(両名とも北海道建築賞委員会委員)から、一色、そして空中歩廊・「新さっぽろ I 街区 アクティブリンク」で北海道建築賞審査員特別賞を受賞された出口亮さん(大成建設)、渡邉竜一さん(ネイ&パートナーズジャパン)に、さまざまな問いが投げかけられました。中でも興味深がったのが、建築と土木の時間軸の違いについて。 

松島さん:建築家の一色さんから見て、土木を専門とされる渡邉さんの仕事の取り組み方ってどうですか? 

一色:建築と土木、一見違うようで、今回「時間軸」という共通点があったと思います。 

渡邉さん:土木の領域は、コストの分岐点が70年を超えます。土木領域に触れることで、素材の扱い方、メンテナンスの方法など、建築を考える時の時間軸が変わりました。 

一色:ひゃくとわで「100年」という時間軸を目指した時に、ハードとしての建築だけで100年を見据えるのではなく、ライフスタイルも含めて100年を見据えていくにはどうしたらいいかと考えました。

一般的な住宅は30〜40年でライフスタイルに合わなくなってしまい空き家になって寿命を迎えてしまいます。ひゃくとわでの、ライフスタイル寿命の限界を超えて70年、100年という時間軸で考えると、従来の建築・土木も違って見えてきます。この時間軸の話がディスカッションの中で印象的でした。

会場からの問い|「ひゃくとわ」が東川町にとってどのような意義を持つか 
最後は会場を交えての質疑応答、一色に対し「ひゃくとわは、東川町にとってどのような意義を持ちますか?」という問いをいただきました。 

一色: 
自分が地域に住むということを、主体的に試行するモデルになったのではと思います。 
住宅をつくることが、地域の営み・風景に組み込まれていくという喜びを与えるきっかけになっていけるのではないかと。 
家を建てることが、ひいてはまちを作っていく、ボトムアップで東川町という町が育っていく布石になって欲しいと願っています。 

2時間におよぶ表彰式・受賞講演会のダイジェスト版をお届けしました。 
北海道建築賞委員会委員のみなさま、49年にもおよぶ歴史的な賞をいただきまして、改めましてありがとうございました。 

表彰式でみなさまからいただいた数々のお言葉を真摯に受け止め、引き続きirodoriでは、お施主さんとの対話を通し、様々なデザインを介して、日常に「彩り」を与えることを大切に活動していきます。 

▶︎ひゃくとわ詳細はこちら 

(文・一色あずさ)